カレワラを読む

備忘録とも言う(^^;)。
さてフィンランドに行くということで。
まずは「カレワラ」を読むことにした。なんて悠長な…てへ。
17日に渡航するのだからあと6日しかないのにな^^;
日本に来る外国人が日本書紀を読むのと同じでは?という疑問もないではないけど(^^;)。でもフィンランド独立は今世紀に入ってからだし。その際にフィンランド人を勇気付けたのはシベリウスの交響詩「フィンランディア」であり、またリョンロット編纂による民族叙事詩「カレワラ」であったのだろうから、日本における日本書紀の位置とは全然違うものと思われる。読むぞ!

私が購入したのは
フィンランド叙事詩 カレワラ(上)(下) リョンロット編 小泉保訳 岩波文庫(赤745-1,2)

カバーの解説によると
「カレワラは、フィンランド各地でカンテレ(堅琴)に乗せて歌い継がれてきた大民族叙事詩。19世紀初頭、リョンロットにより採集・編纂された」とある。
全部で1000ページくらいある。私にとっては覚え書となり、時間がないけどカレワラに興味はあるのだ、というフィンランドファン、シベリウスファンにはダイジェストとなるでしょう(^-^)/

●第一章
 序詞

15 我ら二つの方角よりやって来て、
16 一緒に出会ったのだから!
17 まれにしか一緒に会えないし、
18 我らは互いに相手を知った
19 かくも侘しい辺境で、
20 貧しいポホヤの土地で。

この暗喩は何だろう。「二つの方角から来て出会った」「まれにしか一緒に会えない」とのこと。民族の歴史なのだろうか。
フィンランドを「侘しい辺境」「貧しい土地」と言っている。
ポホヤってなんだろうな。


 天地創造
大気の娘・処女イズマタルが海に降り、風と海によって身篭る。
なるほど、空気と海が風によって攪拌されたことにより生命が誕生したと思わせる…。
何故か水の母と呼ばれる。
彼女は陸地や空を創る。
子供は何十年だか何百年だか経っても産れない。
(この「何年も生まれない子供」というモチーフはどこか他の国の神話だか民話でも読んだことがあるなあ)

 ワイナミョイネンの生誕
イズマタルの子ワイナミョイネンは子宮の中で既に老人になっている。(すごい!)
自力でこじあけて外に出る。

主人公ワイナミョイネンは勇ましい詩人である。詩人が主人公だなんて、日本では考えられないね。

●第二章
 土の種蒔き

「原野の子ペッレルボイネン」またの名を「小柄な若者サンプサ」が荒野に種を蒔く。森ができる。(サンプサは豊穣神だそうだ。大地の母の息子。そして大地の母の同衾者(おおっう!さすが神話的だね〜)。)

 大きな樫の木
樫を「神の木」と呼んでいる。ケルトの影響だろうか。

肝臓色の土という表現がある。すごい表現だね!(第五章でも「肝臓色の裂目」、第二十五章にも「肝臓色の地面」、という表現あり)

樫はなかなか生えない。ワイナミョイネンもそうだったけど「難産」のイメージが色濃いね。
やっと生えた樫の木。だけど大きすぎて太陽や月を隠してしまう。
海から小人が現れる。見る間に巨人になり、樫の木を伐り倒す。この木は色んな物の元となる。

 オスモの大麦
色んな植物が繁茂するが、大事な大麦が生えない。またもピンチだ!

老ワイナミョイネンは自分で開墾する。開墾してそれを火で焼かないことには大麦は生えん!と悟るのだ。
焼畑農業だね!ワイナミョイネン(^^)

開墾する際のエピソード:広い範囲を開墾するのだが、鳥の休む場所ということで木を残すことも忘れない。
自然に優しいエピソードだね!

●第三章
 呪誦比べ

老ワイナミョイネンとラップの若者ヨウカハイネンの呪誦による決闘が行われる。

決闘に負けたヨウカハイネンは妹のアイノを老ワイナミョイネンの妻として差し出すことを約束する。
シベリウスの奥さんの名前はここからもらっているのかな!

何度も出てくる言葉:
この忌まわしい時期に、
滅びゆく末世に。
歌い継がれているころから「滅びゆく末世」という概念があったのだね。

●第四章
 乙女アイノ

アイノは老人との結婚を嫌がる。どうやら心を許した恋人もいたようだ。
アイノは海で溺死する。

●第五章
 ベッラモの乙女の釣り

悲しんだ老ワイナミョイネンはアイノが死んだ海へ出かける。
釣りをしていると変わった魚が釣れる。
調理しようとすると魚は逃げる。魚はアイノの化身だった。アイノは「扱い方を知らないのね!」と言って去る。
(むむぅ…^^;。女性の扱い方を知らなかったんだねえ、ワイナミョイネン。いきなり調理しちゃ駄目だよ^^;)
老ワイナミョイネンは落ち込んでしまい、「こんな時、母が生きていたらどうしたらいいか教えてくれるだろうに」と嘆く。母は墓場より来たりて教える。「ラップの田舎娘やヨウコのかたくなな小娘じゃだめ。ポホヨへ行ってお嫁さんを探しなさい。」

ラップとはラップ人のこと。スカンディナヴィア半島の北側に国を跨って住む(この地域をラップランドと呼ぶ)。「ニルスの不思議な旅」に出てきたね。ラップは蔑称だそうで、今はサーミ人とかサーメ人とか呼ぶそうだ。サンタクロースはこの民族。民族衣装は緑と赤。
ヨウコってのはどこの部族だろ?そしてポホヨは?
読み進めるとしよう。


●第六章
 ヨウカハイネンの復讐

ポホヨという部族はポホヨラというところに住んでいるらしい。ポホヨラは
「あの寒い村」「暗いポホヨラ」と表現されている。
老ワイナミョイネンは「スバントラの人」「カレワラの人」と呼ばれている。スバントラはカレワラの一部分の名前かな?そしてそこからポホヨラってとこに行くんだね。


さて復讐に燃えるヨウカハイネンは、ポホヨラへ向かう馬上の老ワイナミョイネン(海の上を走っている)を弓撃つ。弓は馬に当たり、老ワイナミョイネンは波間を漂うことになる。

●第七章
 ポホヨラでのワイナミョイネン

海を漂う老ワイナミョイネン。嘆き悲しんでいると鷲が助けてくれる。鷲は第二章でワイナミョイネンが開墾する際に鳥が止まるための木を残しておいてくれたことを恩に思っているのだ(^^)
鷲に乗せてもらってワイナミョイネンはポホヨラへ着く。
家に帰りたがる老ワイナミョイネン。異国はいやだ。ポホヨラの老婆に馬をもらう。お礼に老婆の娘さんにお婿さんを派遣することを約束する(サンポというものを作れる人を婿にすると老婆が言う。ワイナミョイネンは作れない。鍛冶のイルマリネンを派遣すると約束するのだ)。
馬に引かれる橇に座った老ワイナミョイネンに老婆は警告する。「決して顔を上げてはならない。不幸が来るぞよ。」

ワイナミョイネンはウバントの求婚者、ウバントラの人、とも呼ばれている。ワイナミョイネンの住んでいた所はここではカレワラの他にワイニョラとも書かれている。一体…^^;)

●第八章
 ポホヤの乙女

走っていく途中、織り物をしている音に、老ワイナミョイネンは顔を上げてしまう。そこにいたのがお立会い、絶世の美女ポホヤの乙女だっ!わ〜お(^^)。
老ワイナミョイネンは求婚する。

 船造り
鳥にポホヤの乙女は聞く。「父の元で暮らすのとお嫁に行くのはどっちが幸せか。」
鳥は答える。「父の元が素晴しい。嫁に行くのは鎖に繋がれた犬になることだ。」
おいおい、やめろよ…鳥さんよお…^^;
ポホヤの乙女は老ワイナミョイネンに次々に難題を与える。全世界共通のモチーフだね!

 膝の負傷(i)
老ワイナミョイネンは娘から与えられた難題である船造りをしていて膝を負傷する。

●第九章
 膝の負傷(ii)

老人に呪言によって傷口をふさいでもらう。
ここで鉄の起源が語られる。

ここで老ワイナミョイネンは「有能な息子」と呼ばれている。訳注によると「有能な息子」という言葉はレンミンカイネンに対して使われることが多いようだ。そしてこれは元来キリストの別称であるとのこと。
色んなところでキリスト教が入り込んじゃってるとこがあるんだね…。


●第十章
 サンポの鍛造

老ワイナミョイネンは故郷に帰る。不朽の工匠・鍛治のイルマリネンを騙してポホヨラへ飛ばす。イルマリネンは立派にサンポを作り上げ、娘に求婚する。娘はまたも拒絶する。おいおい美女ってやつぁ^^;

●第十一章
 サーリでのレンミンカイネン

二枚目レンミンカイネン登場!
少女漫画にしたらレンミンカイネンが人気沸騰間違い無しだね(^^)。二枚目である。いつも女に囲まれて夜遊び三昧。
さて一方サーリの裕福な家には絶世の美女がいる(名はキュッリッキ)。彼女は太陽・月・星の息子の求婚もはねのけ、エストニアやイングリアからはるばるの求婚も断る。
さあ、そこでレンミンカイネンが求婚に行く!その時、嘯く(うそぶく)のだ。

75 「もし俺の家が上品でなく、
76 俺の血筋が偉大でなくても、
77 俺は俺の容姿で選び、
78 俺の外形(そとみ)でものにしてやる。」
くぁ〜〜〜っ、強引だね、レンミンカイネン。自信たっぷりだ〜、かっちょよすぎるね〜(-^〇^-)。

むむっ、しかしレンミンカイネン、本当に結構なワルである。
サーリじゅうの娘をものにしてしまう。彼と寝なかった娘はたった一人だけ。そう、かの名花キュッリッキである。キュッリッキは「軽薄な人は嫌いよ」とキッパリと言う。
かあ、キュッリッキ、いいなぁ(#^_^#)。
そこでレンミンカイネンはなんとキュッリッキを無理矢理さらってしまう(!)
遂に諦めたキュッリッキは、レンミンカイネンに誓わせる。「金や銀のために戦に行くことをしないこと」。レンミンカイネンはキュッリッキに誓わせる。「村にダンスに行かないこと」。

二人を乗せた橇はレンミンカイネンの故郷に向かう…。

●第十二章
 レンミンカイネンのポホヨラ求婚旅行

キュッリッキは村にダンスに行ってしまう…。おらら〜。でもしょうがないよね…。楽しい娘時代からいきなり攫われて奥さんになってるんだものね…。
レンミンカイネンは激怒する。ポホヨラにいるという「どんな求婚者も断るという乙女」(おっ、また出たね!)を嫁に貰いに、ラップに攻め込むと言い出す。キュッリッキや母が止めるのも聞かず、出立。
ポホヨラに着いたレンミンカイネンは呪言でポホヨラの人たちをやっつける。

●第十三章
 レンミンカイネンの課題(i)

娘を要求するレンミンカイネンにポホヨラの老女は課題を課す。
曰く、ヒーシの鹿とトナカイを捕まえろ、と。
レンミンカイネンはスキーを駆り、鹿とトナカイを捕らえる。しかし驕り高ぶっていたせいか、逃がしてしまう。

●第十三章
 レンミンカイネンの課題(ii)

レンミンカイネンは森の守護神タピオの一家に金銀を捧げ、無事に鹿を捕まえる。
意気込んでポホヨラに向かうが、ポホヨラの老女はまたも課題を出す。ヒーシの鼻白馬を捕まえよ、と。(ヒーシというのはどうやら災厄の象徴、災厄の神?悪魔のようなものであるようだ。)
レンミンカイネン、難なくこれをクリアー!
ポホヨラへ行く。

森の主、タピオの娘の名がトゥーリッキである。トゥーヴェ・ヤンソンの畏友、トゥーリッキ・ピエティラ女史の名はここから取られているのだね!
ちなみにトゥーリッキのトゥーリとは「風」の意、ikkiは女性語尾。トゥーリッキ、で「風の女」という意味になろう。


●第十四章
 レンミンカイネンの死

なんとポホヨラの老女はまだ課題を与える…。こいつ…(@_@;)。こいつに応報は来るのかなあ。ひどい婆さんだなぁ…^^;。
今度の課題は「トゥオネラの白鳥」を撃て、だった。トゥオネラは冥府である…。

トゥオネラの川(三途の川にあたる)に向かったレンミンカイネン、そこで不運にも死す。
死んで川に投げ込まれ、バラバラに切り刻まれる…

この辺り、シベリウスがよく取り上げていますね。
・交響的幻想曲「ポホヨラの娘」
・カレワラによる四つの伝説(レンミンカイネン組曲)
  1.レンミンカイネンと島(サーリ)の乙女たち
  2.トゥオネラの白鳥
  3.トゥオネラのレンミンカイネン
  4.レンミンカイネンの帰郷
ちなみに手元にあるドイツグラモフォンのCD(ヤルヴィ指揮、イェーテボリ交響楽団)のジャケットはガッレン=カッレラによる絵画「レンミンカイネンの母」だ。さすがに死体を細切れには描いていない。トゥオネラの川が描かれている。その水は黒い。川には白鳥がいる。心なしか不気味に見える。川岸でレンミンカイネンの死体を前に、母が天を見上げ、なんともいえない表情をしている…。

●第十五章
 レンミンカイネンの母

この章でのレンミンカイネンの母の活躍たるや物凄い!!感動してしまうね!
世界中を捜し歩いて遂にレンミンカイネンの死体がある場所を探し当てる。そこは死者の国なのだ。それでも彼女は諦めない。鍛治イルマリネンに願って熊手を作ってもらい、熊手を持って出かける。太陽に願って一時死者の国を照らしてもらい、その隙にレンミンカイネンの細切れ死体を熊手でかきよせる。母は強し!
死体を寄せ集めて形にするが勿論それは再生しない。それでも彼女は諦めない。非常な努力をした末に(蜜蜂が「善良な鳥」として大活躍!それに対して雀蜂は悪役を与えられている。巻末解説によると【ヨーロッパ一帯で蜜蜂は創造主の鳥、雀蜂は悪魔の鳥と信じられている。また蜂蜜は霊薬とみなされている。】ということだ。)、天の蜜を入手し、終にはレンミンカイネンを蘇らせる!
レンミンカイネンは母とともに帰郷するのであった。

月について語られた部分がある。そこで月は「夜にだけ歩き回り、夏の間は消え去る」とされている。さすが白夜の国だね!

●第十六章
 造船

話は老ワイナミョイネンに戻る。
若者サンプサの手助けにより、ワイナミョイネンは樫の木から立派な船を作る。しかしまだ呪言が三つ足りないのであった。

 トゥオネラ訪問
足りない呪言を求めて老ワイナミョイネンは冥府トゥオネラを訪れる。しかし呪言は得られなかった。色々なピンチを潜り抜け無事生還。冥府の様子を語る。

地獄に行って帰ってきた人、っていうモチーフは世界中の神話に見受けられるね!

●第十七章
 ビプネン訪問

さらに呪文を求める老ワイナミョイネン。ビプネンという巨人(地に寝そべって体から木を生やしている)を訪ねる。ビプネンは「秘語を腹に蓄えた者」とのこと。老ワイナミョイネンはビプネンの口から体内に落ちてしまう。
しかし老ワイナミョイネンは挫けなかった。体内で即席の鍜治場を作り上げ、そこで鉄を煮始める。熱くてたまらんビプネン!
ここからビプネンによる長大な呪文が始まる。さすがは詩だ!話のバランスとか考えない。詩興の赴くまま、言葉が迸るままに長々と呪文は続く。うーんすごい量。さすがは秘語を蓄えた者だね!さあ、その呪文たるや…
「駆除の呪文」「不明な危害の根元の呪文」「自然の病気での保護の呪文」「厄病呪病の根元の呪文」「災禍抑制の呪文」「救援の呪文」「生地へ駆逐する呪文」ハア、ハァ^^;「報復の呪文」「一般魔除けの呪文」「閉じこめの呪文」おいおいまだあるんかい^^;「起動の呪文」「脅迫の呪文」「困惑の呪文」。13ページ、348行にもわたって繰り広げられるのだ〜!ふぅ〜。
それでもまだ去らない腹の中の災厄(つまり老ワイナミョイネン)にビプネンは弱音を吐く。老ワイナミョイネンは要求を出す。お前が知ってる全てを語れ、と。ビプネンは歌い出す(呪文は語るものでなく歌うものなのだ)。
全ての呪文を手に入れた老ワイナミョイネンは意気揚揚と故郷に戻り、船を完成させる。

●第十八章
 求愛競争

さあ、いよいよ老ワイナミョイネンはポホヨラの娘に求愛に船出する。

さてそれではたまらないのは第十章で老ワイナミョイネンに騙されてポホヨラへ飛ばされ、サンポを作って求婚してフラれている鍛冶のイルマリネンだ。妹アンニッキの知らせにより老ワイナミョイネンの出立を知ったイルマリネンはサウナで身を清め(おおっ、出たな、サウナ!)、馬橇を走りに走らせる。そして老ワイナミョイネンに追いつき、正々堂々と揃って申し込みをしよう、と約束するのだ。

一方のポホヨラの娘の傍では、ポホヨラの老婆が囁く。「財産がある老ワイナミョイネンの方にしなさい。」
(くうぅ〜〜、このおばあさんってばまだそんなことを(--;))
しかし、ポホヨラの娘は決然と言うのであった。

639 私は財産目当てに行きません

645 乙女は無償でやるべきよ
646 鍛治イルマリネンのもとに、
647 彼はサンポを鍛造し、
648 飾った覆いを叩き上げた。」

よく言った!ポホヨラの娘(^^)

そして先に着いた老ワイナミョイネンが求婚すると、彼女はキッパリと断るのであった。

●第十九章
 イルマリネンの課題

またも老婆が三つの課題を出す…ヤレヤレ┐(´-`)┌。
でも鍛治のイルマリネンはポホヤの娘の助言を受け、立派にそれを果たすのだった。

 ポホヤの乙女の婚約
いよいよ婚礼の準備が行われ始める
そんななか、老ワイナミョイネンはとぼとぼと帰っていくのだった。

1999.7.11記

●第二十章
 婚礼準備

この章では祝いの歌が歌われる。
その中に「ビールの詩」というのがある。北欧人はビールが大好きらしい(特にデンマークはビール大国とのことだ)。フィンランドでもビールは大事なんだね。
この「ビールの詩」がビールの起源を語っているかのようで面白い。

・ビールは大麦とホップと水と火によってできる、とまず語られる。
・「オスモの娘、ビールの醸造家」が大麦とホップ、水を入れ、鍋に火を掛けて、
 汁を沸騰させる。
・煮立てたビールを白樺の樽に入れるが、発酵させることができない。何を入れたら
 いいだろう…。
・まず樅笠と松笠を入れてみる。駄目だ…。
・次に熊の(よだれ)を入れてみる。これも駄目だ…。(ここの訳注が面白い:【フィンランド
 では古く豚の涎が酵母の代わりに用いられていたという報告がある。唾液によって
 酒を造る原始的方法は世界各地に知られている。】)
・今度は蜂蜜を入れてみる。発酵した!
と言うことだ。ふむふむ。

さてポホヨラの女主人(あの老婆だね)は全てのポホヨラの民と全てのカレワラの民を婚礼の席に招く。あのレンミンカイネン一人を除いて…。

●第二十一章
 ポホヨラの婚礼

婚礼が行われる。
老ワイナミョイネンも招かれており、今は高らかに詩歌を歌い、呪文を唱え、婚礼をぐのであった。

●第二十二章
 花嫁の悲嘆

花嫁は娘時代と別れ、他家に嫁ぐことに悲しみを憶えます。そして家の者達も口々に哀別の歌を歌います。
それにしても…ずいぶんと悲観的ですね、結婚観が…^^;

229 主人の終身の奴隷として、
230 義母の生涯の奴隷として。

240 不運な者よ、経験するだろう、
241 義父の骨ばった顎を、
242 義母の石の舌を、
243 義兄の冷たい言葉を、
244 義姉の項(うなじ)の突き上げを。

255 見知らぬ母は母に似ていない、
256 よその女は生みの親に似ていない!
257 見知らぬ母はめったに諭さない、
258 めったに正しく教えない。

おいおい、これでは誰も結婚したくなくなっちゃうよ^^;

上記の「哀別の歌」のあと、とってつけたように「激励の歌」もあるけれど、分量的にも短く、大して説得力を持っていない。
当時の嫁入りは悲嘆の方が大きかったのかもしれませんね。


●第二十三章
 花嫁の教訓

姉が花嫁に「教訓の歌」を歌う。
これはすごい。464行もある。行儀よくし、家族やその習慣に敬意を持ち、いつもにこやかに、人より遅くまで起きていて人より早く起きろ、とかそういう内容。うーん、確かにこれでは嫁に行きたくないかも^^;。この「教訓の歌」は嫁に行く娘に対して歌う歌として歌い継がれてきたものだと思われる。実に事細かに嫁の心得や、仕事の内容、仕事をする上での注意点などが述べられる。

次に村の老婆が自分の来し方を花嫁に聞かせる。
これがまた366行。前記の「教訓の歌」どおり正しく貞淑に立派に振舞ったのだが、酷い仕打ちを受けたという話だ。
夫に暴力を受け、遂には家を出て郷に帰ってみたが、もう兄の代になっていて、(あによめ)に酷い仕打ちを受け、彷徨い歩く…というお話。

一体これはどうなっているのだろう!!?
22〜23章の2章が全て嫁の苦労に割かれている。全五十章だから25分の1。43ページにわたるこの部分は一体!?
この辺は女性歌唱者によるものなのだろうか。
それにしても…幸せなお嫁さんはいなかったの!?

という疑問を抱え、巻末解説を読んで思ったこと。
当時は一度嫁いだら「盆暮れに里帰り」するとかそういうなまやさしいものではなく、ある氏族からある氏族へ完全に移る、ということであるから、このように嘆き悲しむようだ。そしてまた、婚礼での花嫁の悲嘆は一種の通過儀礼にもなっていたようである。


●第二十四章
 新郎への教示

ここでいきなり一転。花嫁が婿に対して歌う。「私を大事に扱え」「雇い女中として扱うな」「暴力をふるうな」

 花嫁の訣別
その場に居合わせた老爺が歌う。「あんまり甘やかすなよ」と。

さて遂に出立の時だ。花嫁は最後に実家の皆に別れを告げる歌を歌う。
橇は鍛治のイルマリネンの家へと向かうのであった。

1999.7.12記


なお、巻末に掲載されていたフィンランド歌謡をMIDI化してみました。
こちらでお聴きになれます。


1999.7.13記


上巻了


下巻 25章〜50章はこちら

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Text by NIHIRA Takuma


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