女神との出逢い〜モルゴーア・クァルテット+小川典子〜

1998/4/25 フィリア・ホール(神奈川)

隠れた名曲の啓蒙者
モルゴーアの素晴しさってなんだろう?色々あるだろうけれど、一番最初に気付くことは彼らが隠れた名曲を我々一般聴衆に提示してくれることではないだろうか。今まで聴いたこともなかったような曲をいつもプログラムに載せてくれたり、或いは荒井さんの素晴しいアレンジによってアンコール曲となったり。
そういった意味で、今回のプログラムの2曲目「シューマン:弦楽四重奏曲第3番 イ長調」は私にとってモルゴーアに啓蒙された曲であった。私にとっての「シューマンの3番」初体験はモルゴーアの第10回定期演奏会。こんなに美しい曲が世の中にあったのか、と打ちのめされたことを覚えている。そしてモルゴーアが「シューマンの3番」をまた演るというのだ!こんな短期間に同じ曲を取り上げるからには、何か期するところがあるのだろう。期待を込めて神奈川へと向かった。
当日は生憎の雨であった。
1曲目の「ハイドン:弦楽四重奏曲第77番 ハ長調「皇帝」の出だしからして、いつもの音量が感じられないように思った。やはり湿気は弦楽器の大敵であるのだろう。2楽章の有名な掛け合いの部分などは楽しめたが・・。
シューマンの第1楽章
そして、シューマンの3番だ。1楽章の今にも折れそうな美しさ!シューマンの真骨頂がここにある。前回のモルゴーア定期の後に他のクァルテットによるCDも購って、聴いてはみたのだが、その1楽章は甘ったるすぎた。私がシューマンをあまり好んで聴かなかった理由もそこにあるのだが。・・・モルゴーアは違う!適度に甘美であり、リリシズムがある。
モルゴーアの最強奏
モルゴーアの演奏の魅力は?
快適なテンポ設定、パート間に主従関係が無く4パートそれぞれが同程度の比重を持つこと、リズム・シンコペーションの歯切れ良さ・・・など色々あげられよう。しかし、素人丸出しで恥ずかしいのだが、私が最も魅力を感じるのは彼らの最強奏である。彼らがゴリゴリと弾きまくるフォルティッシモは、本当に4人で出しているのだろうかと耳を疑いたくなるような圧倒的な迫力である。
2楽章の後半部分に正しく最強奏の見せ場があり期待していたのだが、今日は雨のせいなのだろうか、前回ほどの迫力が感じられず天を憾んだ。
しかし、4楽章の変わったテンポの主題(ジプシー風というか東欧風というか?)のフォルティッシモは、素晴しかった!開演から1時間ほど経ったおかげか段々にホールが鳴り出してきたのだろうか、テンポ・アーティキュレイション・音量が三位一体となって、素晴しい楽興の時であった・・・。
小川典子さん
プログラム最後は「ブラームスのピアノ五重奏曲 ヘ短調 op.34」。小川典子さんは寡聞にして知らなかったのだが、五重奏団としてもやっていけそうなほど息の合った名演であった。
アンコールでさらりと独奏した「ブラームス:間奏曲 op.118-2」も暗いだけと思われがちなブラームスのロマンティックな部分を掬って好演!
Groovy!
アンコール2曲目は、やはりショスタコ!「ピアノ五重奏曲 第三楽章 スケルツォ」。
最早、評論みたいな感想は浮かばなかった。私の頭に浮かんだ言葉はこれだけ。
「かっこよすぎるぞ、モルゴーア!」
ブラアヴォ!
<了>

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